問題です。
トウガラシの果実で、一番辛い部分は、どこでしょうか?
A:種子
B:果実の皮の部分、果皮(かひ)
C:果実の中心部分、胎座(たいざ)
答えは、このページの最後↓
目次
1. カレーの起源と歴史 ~インド、イギリス、日本~
「カレー」(curry、カリー)とは、
一般に、○○などの数種類の香辛料(spice、スパイス)を混ぜ合わせた「混合香辛料」、あるいは、それで味付けをした料理のことを指しますが、
これは、イギリスが、こうしたインドの調味料、インド料理を「カレー」と称して、イギリス料理に取り入れたことにより、世界中に普及した言葉です。
世界が「カレー」と呼ぶ、インドの煮込み料理は、本来、それぞれに固有の名称があり、
インド料理に、「カレー」という名前の料理はありません。
「カレー」は、インド周辺で生まれ、18世紀にイギリスに伝わりました。
イギリス人の船乗りが、航海中に、シチューが食べたくて、
長持ちのしない「牛乳」のかわりに、日持ちのする「カレー」を使ったことが、「イギリスのカレー」の由来の一つとされています。
ですが、イギリス人がインド人のように、多種多様な香辛料を使いこなすことは至難の業でした。
そこで、イギリスのクロス・アンド・ブラックウェル(Crosse & Blackwell、C&B)社が、
あらかじめ、スパイスを調合したものを「カレー粉」(curry powder、カリーパウダー)として、商品化し、
これにより、カレーは、イギリスの家庭料理として普及します。
そして、ソースを重んじるフランス料理の影響から、
小麦粉をバターなどの油脂で炒めた「ルー」(roux、ルウ)で、とろみを出した、
「カレールー」(curry roux)が誕生します。
日本には、明治初期に、イギリスから、イギリス料理として伝来し、
カレーを米飯にかけた「カレーライス」(curry rice、カリーライス|curry and rice、カリーアンドライス|curried rice、カリードライス)が普及し、
1968年には、大塚食品が、世界初の家庭用レトルト食品「レトルトカレー」(商品名:ボンカレー)を発売します。
「松山容子」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)
現在では、給食メニューの人気アンケートでも、常に上位に挙がっているなど、
ラーメンと並んで、日本の国民食と呼ばれるほど、人気のある食品となっています。
ちなみに、「カレーならココ一番や!」というキャッチコピーで有名な「カレーハウスCoCo壱番屋」(通称:ココイチ)は、
日本各地や、台湾、タイ、韓国、米国、香港などにも店舗を持ち、
2013年1月17日より、「世界で最も大きいカレーレストランのチェーン店」として、ギネス世界記録に認定されています。
「壱番屋」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)
2. スパイスの種類と効用 ~トウガラシ、ターメリック、クミンシード~
カレーに欠かせない、スパイス。
カレーの本場インドなど、世界には、700種以上のスパイスがあると言われています。
ところが、本場インドでは、使うスパイスの種類は多くても10種類程度。
日本では、20~30種類ものスパイスが使われています。
これは、インドでは、「パンチの効いたカレー」が好まれるのに対し、
日本では、「マイルドなカレー」が好まれるからです。
スパイスの種類とその特徴 ~辛み、色、香り~
①主に、辛みに関係している |
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②主に、色に関係している |
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③主に、香りに関係している |
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特に、
①「トウガラシ」
②「ターメリック」
③「クミンシード」
この3つは、カレーには欠かせない重要なスパイスで、
その中でも、特に、
③「クミンシード」は、
これがないとカレーにはならないというほどに重要なスパイスです。
目次
①「トウガラシ」 ~カレーの辛みは、カプサイシンの辛み~
「トウガラシ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)
「トウガラシ」は、中南米が原産で、
「タカノツメ」(鷹の爪)など、幸味の強い、chili系の品種「チリペッパー」(chili pepper)から、
「シシトウガラシ」(獅子唐辛子|シシトウ)など、辛味の弱い、sweet系の品種「スウィートペッパー」(sweet pepper)まで、
その種類は、3000種類以上にも上ると言われています。
トウガラシの辛味成分の主体は、「カプサイシン」(capsaicine)であり、
その効用は、
- 食欲促進
- 消化液分泌促進
- 発汗促進
- 血行促進
- 健胃(胃を丈夫にする)
- 駆風(くふう|胃腸内にたまったガスの排出)
- 刺激
- 鎮痛
- 強心(きょうしん|心臓の強化)
など、食欲不振、消化不良、夏バテ、冷え症などの予防・改善に有効とされています。
トウガラシの辛みの度合いを示す単位を「スコヴィル値」(scoville scale、スコヴィル-スケール)といい、
砂糖水で薄めていき、どの濃度まで辛みを感じとれるかで、辛みの度合いを判断する数値です。
現在では、測定機で、カプサイシンの量を、直接はかることができますが、
「スコヴィル値」が長年使用され、あまりに普及しているため、
機械測定したカプサイシンの量の数値を、スコヴィル値に変換し直して、表記する方法が一般化しています。
スコヴィル値
「純粋なカプサイシン」 | 1600万 |
---|---|
「キャロライナ・リーパー」(キャロライナの死神|世界一辛いトウガラシ) | 156万9300~220万 |
「ハバネロ」 | 10万~35万 |
「タカノツメ」 | 3万~5万 |
「シシトウガラシ」 | 0 |
「純粋なカプサイシン」を、舌で感じられなくなるようにするには、砂糖水で、1600万倍に薄める必要があります。
「1mgのカプサイシン」だと、
「1mg」:16,000,000mg
「1mg」:16,000g
「1mg」:16kg
16リットルの砂糖水を飲まないと、辛みが消えません(笑)
ちなみに、トウガラシには、防虫効果があることが古くから知られており、
- 書物
- ひな人形などの物品
- 米などの食品
の保存に用いられていたこともあるそうです。
なお、赤トウガラシに含まれる、赤い色素成分「カプサンチン」(capsanthin)は、辛味成分である「カプサイシン」とは別物です。
②「ターメリック」 ~カレーの黄色は、クルクミンの黄色~
「ウコン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)
ターメリックの原料である「ウコン」(黄染草、キゾメグサとも)は、
インドが原産で、その生産量・輸出量は、ともに世界一であり、
現在、およそ50種類ほどある「ウコン」の内、インドだけで、30種類を超える、新しい品種が育てられています。
ウコンの根茎「ターメリック」に含まれる、黄~赤の色素成分「クルクミン」(curcumin)は、
- 肝機能の改善・回復
- 胆汁分泌促進
- 解毒
- 抗菌
- 抗酸化
- 抗がん
- 抗炎症
- 抗アミロイド
といった、様々な効用があり、
このほかにも「ターメリック」には、
- 健胃(胃を丈夫にする)
- 消炎(炎症を抑制する)
- 鎮痛
- 抗血栓(心臓や血管内の血液の固まり〈血栓、けっせん〉を防ぐ)
- コレステロール値の低下
など、その生理活性と医学的有用性は、近年、盛んに研究されています。
なお、日本のカレー粉に使われているのは、苦みのない「秋ウコン」であり、
健康食品として普及している、苦みのある「春ウコン」とは異なります。
「春ウコン」と「秋ウコン」 ~どっち!?~
ウコンには、2つは別の品種があり、
名前のとおり、春に開花するのが「春ウコン」、秋に開花するのが「秋ウコン」です。
日本では、「春ウコン」を姜黄(キョウオウ)、「秋ウコン」を鬱金(ウコン)というのに対し、
中国では、「春ウコン」を鬱金(ウコン)、「秋ウコン」を姜黄(キョウオウ)と言います。
これは、日本にウコンが伝来し、普及する過程で、これら情報が混乱し、正しく伝わらなかったためであると考えられています。
「春ウコン」は、クルクミンを、0.3%程度、
「秋ウコン」は、クルクミンを、3~4%含んでいますが、
どちらのウコンが優秀かについては、諸説あり、専門家の間でも、意見が分かれています。
ウコンの安全性は、まだ十分に検討され尽くしていないため、
医療機関で処方される、医薬品漢方薬の中には、ウコンを含有するものは存在しません。
ウコンの摂り過ぎによる、薬剤の副作用として、肝臓が障害を受ける「薬剤性肝障害」(Drug-induced Liver Injury)が、多数、報告されています。
クルクミンの摂り過ぎによる、肝臓の「脂肪変性」(fatty degeneration)も、報告されています。
特に、肝障害患者においては、サプリメントとして市販されている通常量で、死亡例を含めた、重篤な状態に陥った事例が、少なからず、報告されています。
ウコン、ターメリック、クルクミンは、
- カレーはもちろん(カレー粉の20~40%が、秋ウコン)
- 黄色い着色料を使用している、からし、たくあんなどの漬物、水産ねり製品、栗のシロップ漬、和菓子、ウィンナーソーセージ
などに含まれていますので、
肝臓に持病のある方はもちろん、
お酒を飲むときなど、肝臓に負担をかけるときには、口にしない方がいいかもしれません。
なお、コショウの辛味成分の一つである「ピペリン」(piperine)は、薬物代謝に影響を与え、クルクミンの吸収効率を高めることが知られています。
③「クミンシード」 ~カレーの香りは、クミンの香り~
「クミン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)
クミンの種子「クミンシード」は、
地中海沿岸原産で、
強い芳香と、ほのかな辛味や苦味があり、
- 食欲促進
- 消化促進
- 健胃(胃を丈夫にする)
- 駆風(くふう|胃腸内にたまったガスの排出)
- 整腸
- 鎮痛
- 鎮痙(ちんけい|痙攣〈けいれん〉を鎮める〈しずめる〉)
- 鎮静
- 解毒
など、香辛料、薬用植物としての歴史は最も古く、
原産地のエジプトでは、胃腸薬や鎮痛剤、ミイラの防腐剤などに利用されていました。
カレー特有の香りの正体は、「クミンシード」の強い芳香であり、
クミンの香りには、胃などの消化管の蠕動運動(ぜんどううんどう、蠕き運動〈うごめきうんどう〉、peristalsis)を活発にするなど、食欲を高める効果があります。
中世ヨーロッパでは、男女間の貞節の象徴とされ、結婚式のとき、クミンをポケットへ忍ばせる風習があったといわれています。
問題の答えは、「C:果実の中心部分、胎座(たいざ)」です。
「A:種子」には、辛味成分がほとんど含まれていません。
「B:果実の皮の部分、果皮(かひ)」にも、含まれていますが、
「C:果実の中心部分、胎座(たいざ)」ほど、多くはありません。
トウガラシは、この胎座で、辛味成分を作っているのです。
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