色白、色黒、蜜柑色。肌の色の違いは、天然色素の種類と量の違いでした。

年間日照時間(1971~2000年の平年値)

「年間日照時間(1971~2000年の平年値)」

秋田地方気象台 | Q&A 秋田市の年間日照時間について

 

秋田美人は、色白でした。

 

秋田は、年間日照時間が、およそ1600時間と、全国で一番少ないことで知られています。

一方、化粧品メーカーの調査では、色白の人が全国で一番多いのも秋田だそうです。

 

肌の色を、人種や個人の遺伝に求める見解もありますが、日照時間が肌の色に関係しているのもまた事実のようです。

 

日照時間は、北海道から中国地方までの日本海側が少ない傾向にあり、特に、東北地方から北陸地方にかけてが顕著です。

これは、冬にシベリアから吹き出す、北西の季節風の影響で、曇りや雪の日が多いからです。

 

目次

1. メラニン色素と肌の色
2. カロテノイド色素と肌の色

1. メラニン色素と肌の色 ~雪国の人の肌の色は、雪のように白い~

 

色素(coloring matter、pigment)とは、発色の素(もと)になる物質のことで、

生物や鉱物などの天然物に含まれる「天然色素」と、
化学的に合成された「合成色素」に大別されます。

 

例えば、駄菓子(だがし)の原材料でよく使われている、

ベニバナ(紅花)は、「天然色素」ですし、
○色○号は、「合成色素」です。

 

そして、私たちの体の色は、メラニン(melanin)という「天然色素」が大きく関係しています。

 

メラニンには、

①黒~茶の「真性メラニン」(ユーメラニン、eu-melanin|狭義のメラニン)と、
②黄~赤の「亜メラニン」(フェオメラニン、pheo-melanin)の、

2種類があって、

この2つの色のバランスが、私たちの体の色を生み出しているのです。

 

例えば、髪の色が、

黒いのは、大量の「真性メラニン」が含まれているからであり、
茶色いのは、多量の「真性メラニン」、「亜メラニン」が含まれているからであり、
黄色いのは、少量の「真性メラニン」、多量の「亜メラニン」が含まれているからであり、
赤いのは、微量の「真性メラニン」、大量の「亜メラニン」が含まれているからです。

 

ヘア-ブリーチ(hair bleach)で、私たち日本人の髪の色が、黒~茶~黄~白となるのは、髪に含まれるメラニンが破壊されるからで、

黄色が生まれるのは、「真性メラニン」は破壊されやすく、「亜メラニン」は破壊されにくいからです。

 

また、年をとると髪の色が白くなるのは、髪に含まれるメラニンの量が減少するからです。

 

一方、肌の色は、主に「真性メラニン」が大きく関係しています。

 

「真性メラニン」は、紫外線からお肌を守る働きがあり、

日の光にさらされると、その生成量が増えます。

 

これが、日焼け(sun-tan、サンタン)であり、

日焼けの機会の多い地方では、元から肌の色が黒くなる傾向にあります。

 

つまり、肌の色が、

黒いのは、多量の「真性メラニン」が含まれているからであり、
白いのは、少量の「真性メラニン」が含まれているからです。

 

積雪に反射した光で焼ける「雪焼け」(snow-tan、スノータン)という言葉もありますが、

比較的、日に当たる機会の少ない、雪国の人の肌の色が、雪のように白いのには、理由があったということです。

 

2. カロテノイド色素と肌の色 ~ミカンを食べ過ぎると、お肌がミカンのように黄色くなる~

こたつにミカン

 

カロテノイド(carotenoid|カロチノイド)とは、主に野菜や果物に含まれる、黄~赤ないし紫の「天然色素」の系(けい)のことで、

これまでに、600種類以上のカロテノイド系「天然色素」が発見されています。

 

化学構造によって、「カロテン類」(カロチン類)、「キサントフィル類」などに大別したり、

体内でビタミンAに変わるかどうかで、「プロビタミンA」と、「その他」に分けるなど、

その分類は、様々です。

 

「カロテン類」
  • ニンジン、ホウレンソウなどに含まれる、黄~赤ないし紫の「カロテン」(carotene)
  • トマト、スイカなどに含まれる、赤い「リコペン」(lycopene|リコピン)
「キサントフィル類」
  • パセリ、ホウレンソウなどに含まれる、黄色い「ルテイン」(lutein|狭義のキサントフィル、xanthophyll)
  • ミカンなどの柑橘類(かんきつるい)に含まれる、黄色い「クリプトキサンチン」(cryptoxanthin)
  • 赤トウガラシ、赤ピーマンなどに含まれる、赤い「カプサンチン」(capsanthin|※辛味成分である「カプサイシン」とは別物)
  • コンブ、ワカメなどの海藻類(かいそうるい)に含まれる、赤褐色の「フコキサンチン」(fucoxanthin)
  • サケ、マス、イクラ(サケ、マスの卵)、カニ、エビなどの魚介類に含まれる、赤い「アスタキサンチン」(astaxanthin)

 

カロテノイドは、緑黄色野菜(有色野菜、濃色野菜)や柑橘類、一部の海藻類や魚介類に、多く含まれています。

(※緑黄色野菜の定義は、カロテンの含有量が目安とされることが多いです)

 

カロテノイドは、

  • お肌を紫外線から守る「メラニン」のような働きや、
  • 皮膚や粘膜を丈夫にしたり、
  • 免疫細胞の働きを活性化させるなど、

シミ・シワ・老化、視覚障害、癌(がん)や動脈硬化などの予防に重要な役割を果たしています。

 

現代は、病気の治療というよりも、予防の時代であり、

カロテノイドは、病気の予防という意味で、現在、最も注目されている、栄養素の一つです。

 

カロテノイドは、水に溶けにくく、油脂に溶けやすい「脂溶性」(しようせい)の色素成分ですので、

脂質(脂肪)と一緒に摂ることで、吸収効率を高めることができます。

 

脂質を適度に含んでいる、牛乳と一緒に摂ってみるといいかもしれません。

 

活性酸素 VS 抗酸化物質 ~アスタキサンチンは、自然界で最強の抗酸化物質~

 

「活性酸素」(active oxygen)とは、化学反応が起こりやすくなった、強い酸化力を持つ酸素のことで、

細胞を傷つけ、お肌の劣化と老化を促進します。

 

一方、ビタミンC、Eなどの「抗酸化物質」(anti-oxidant)は、活性酸素による弊害を抑制し、

細胞を守り、お肌の美容と健康を促進します。

 

カロテノイドも抗酸化物質であり、その抗酸化力は極めて高く、

その中でも特に「アスタキサンチン」は、非常に強い抗酸化力を持っており、

その抗酸化力は、ビタミンEのおよそ550~1000倍にも相当します。

 

ところが、カロテノイドを摂り過ぎると、カロテノイドの血中濃度が上昇し、脂肪組織や角質に沈着し、

皮膚が、蜜柑(みかん)のように、黄色くなる症状「柑皮症」(かんぴしょう)を発症します。

 

主に、手のひらや足の裏など、角質の厚い部分が黄色くなりますが、

ひどいときには、全身が黄色くなります。

 

  • 野菜や果物が好きな方はもちろん、
  • 肝臓の機能が十分に発達していない子供(プロビタミンAが変換されにくいので)や、
  • 脂質異常症(血液中の脂質の異常、dyslipidemia|旧:高脂血症)の方(カロテノイドは脂溶性なので)は、

柑皮症になりやすく、

 

  • 菜食ダイエットや、
  • ミカンの食べ過ぎ、
  • 野菜ジュースの飲み過ぎが原因で、

柑皮症になる方が多いそうです。

 

特に、ミカンに含まれる「β-クリプトキサンチン」は、吸収されやすく、

しかも、かなりの長期間に渡って、体内に蓄積されるので(ミカンシーズンである1月のが、9月でも残っていることがあります)、

ミカンの食べ過ぎが、柑皮症の原因になりやすいことで知られています。

 

さらに、日本人は、「β-クリプトキサンチン」の血中濃度が高く、

さらにさらに、女性は血中濃度が上昇しやすいので、

お肌が黄色くなるのが嫌な方は、注意が必要かもしれません(色白の方は目立つので、特にです)。

 

ですが、心配はいりません。

皮膚や粘膜、眼球が黄色くなる症状「黄疸」(おうだん、jaundice)とは違い、病気や疾患に伴う症状ではなく、

また、カロテノイドの摂取を控えれば、自然に元に戻ります(時間はかかります)。

 

いずれにしても、柑皮症の原因は、カロテノイドの摂り過ぎであり、

ミカンを食べ過ぎると、お肌がミカンのように黄色くなるのには、理由があったということです。

 

なお、柑皮症のほかにも、

  • 銀(silver)や金(gold)の摂り過ぎで、お肌が青くなる「銀皮症」(ぎんぴしょう)や「金皮症」(きんぴしょう)
  • メラニンの過剰沈着による「黒皮症」(こくひしょう)
  • 皮膚の炎症から生じる「紅皮症」(こうひしょう)

というのもあります。

 

以上です。

 

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