食品包装用ラップフィルムの比較 ~ラップフィルムの起源と歴史、素材と性能~

食品包装用ラップフィルム

 

問題です。

 

ラップの切り口(切れ端、引き出し口)が分からなくなりました。

A:爪でカリカリ
B:指でサワサワ
C:テープでペタペタ

答えは、このページの最後↓

 

目次

1. ラップフィルムの起源と歴史
2. ラップフィルムの素材と性能

1. ラップフィルムの起源と歴史 ~ラップの歴史は、ポリ塩化ビニリデンの歴史~

 

ラップフィルム(wrap film)とは、

対象を、包んだり(wrap)、覆ったりする、薄い膜(film)のことで、

  • 素材がプラスチック(plastic)であることから、「プラスチックラップ」(plastic wrap)
  • ぴったりくっつく(cling)ことから、「クリンラップ」(cling wrap)、「クリンフィルム」(cling film)
  • 主に食品(food)を包むことから、「フードラップ」(food wrap)

などと言われています。

 

ところが、ラップフィルムは、本来、食品包装用に開発されたものではなく、

元々は、戦争での利用を目的として開発されたものです。

 

1872年に発見された「ポリ塩化ビニリデン」(Poly-VinyliDene Chloride、PVDC|ポリ-ビニリデン クロライド)を素材に、

1933年、米国のダウ・ケミカル社のラルフ・ウイリーが開発し、

第二次世界大戦中(1939年~1945年)、

  • 蚊(か)などから身を守るために覆う、帳(とばり)、「蚊帳」(かや|蚊屋)
  • 水虫(みずむし)から足を守るための「靴の中敷き」
  • 銃や弾丸を湿気から守るための「包装フィルム」

などに利用されました。

 

戦争とラップフィルム

 

戦後(1945年~)は、ナチュラルチーズをはじめ、食品を包装するための様々な改良が行われ、

1955年、米国のダウ・ケミカル社で、食品包装用ラップ「サランラップ」(saran wrap)が開発されます。

 

日本では、1960年の呉羽(くれは)社の「クレラップ」、

同年の旭化成(あさひかせい)社とダウ・ケミカル社の「日本のサランラップ」、

その後は、冷蔵庫や電子レンジの普及により、

  • 冷蔵庫での保存や
  • 電子レンジでの調理など

現在では、私たちの生活とは切り離せない存在となっています。

 

2. ラップフィルムの素材と性能 ~ラップの違いは、素材と性能の違い~

食品包装用ラップフィルムの比較

 

日本の家庭用ラップフィルムには、主に、

①ポリ塩化ビニリデン
②ポリエチレン(Poly-Ethylene、PE)
③ポリ塩化ビニル(Poly-Vinyl Chloride、PVC|ポリ-ビニール クロライド)
④ポリメチルペンテン(Poly-MethylPentene、PMP)

の4種類の素材が利用されていて、

 

それぞれ、

  • 引張弾性(ハリコシ性)
  • 密着性(くっつき性)
  • バリア性
  • 耐冷熱性
  • カット性
  • 透明性

など、その性能が異なります。

 

目次

密着性(くっつき性)
バリア性
耐冷熱性
まとめ

密着性(くっつき性) ~分子間力の大小~

①ポリ塩化ビニリデン
②ポリエチレン
③ポリ塩化ビニル
④ポリメチルペンテン

 

ラップが張り付くのは、「静電気」というよりも、分子と分子の間に働く力「分子間力」(ぶんしかんりょく、intermolecular force)によるもので、

ラップの表面は平らで、より密着して、分子間力が働くので、

ラップ同士がくっつくと、「張り付いてとれない…」なんてことが起こってしまうのです。

 

バリア性 ~分子間隙の広狭(こうきょう)~

 

分子の隙間が狭いと、乾燥や匂いの漏れが少なく、逆に、

分子の隙間が広いと、通気性があって、野菜などの呼吸を妨げない、というメリットがあります。

 

酸素バリア性

①ポリ塩化ビニリデン
②ポリエチレン
③ポリ塩化ビニル
④ポリメチルペンテン

 

水分バリア性

①ポリ塩化ビニリデン
②ポリエチレン
③ポリ塩化ビニル
④ポリメチルペンテン

 

耐冷熱性 ~破れない~溶けない(-60℃~180℃)~

①ポリ塩化ビニリデン-60℃~140℃
②ポリエチレン-60℃~110℃
③ポリ塩化ビニル-60℃~130℃
④ポリメチルペンテン-30℃~180℃

 

冷凍庫の中(普通は、およそ-20℃)から、沸騰した熱湯(100℃)が直接触れるような状況までは、問題なく利用できますが、

長期間の冷凍や、超低温フリーザー(-60℃とか)で、破れたり、

電子レンジで、油分の多い食品(150℃とか)に直接触れて、溶けてしまう場合があります。

 

まとめ

食品包装用ラップフィルム

 

①ポリ塩化ビニリデンは、そのほか、

  • 引張弾性(ハリコシ性)
  • カット性
  • 透明性

など、多くの点で優れていますが、

値段が、他の素材の製品より、高いです。

 

②ポリエチレンは、

性能が、他の素材の製品に劣りますが、

値段が、他の素材の製品より、安いです。

 

③ポリ塩化ビニルは、

収縮性が強く、よく伸び縮みするため、

業務用ラップとして、飲食店やスーパーで使われることが多いです。

 

④ポリメチルペンテンは、

ダイオキシンについての理解の浅い、1990年代の、塩素系プラスチック(①③等)のダイオキシン(およそ300℃~500℃で発生)を背景に、

非塩素系プラスチック(②等)の需要から、「非塩素系プラスチックで、しかも耐熱性の高いラップ」として、商品化されたものです。

 

ところが、「モルモットだけが、ダイオキシンに敏感だった」(人間に、ダイオキシンはほとんど効かない)という事実と、プラスチックごみ処理の改善で、現在では、180℃の耐熱性だけが売りとなっています。

 

以上、食品包装用ラップフィルムの比較でした。

 

問題の答えは、「C:テープでペタペタ」です。

ラップの切り口が分からなくなったときにはテープでペタペタ

 

「A:爪でカリカリ」すると、ラップが何重にも傷ついてしまいます。

「B:指でサワサワ」すると、静電気が発生して、かえって厄介なことに。

 

そこでメーカーでは、「C:テープでペタペタ」を推奨しています。

セロハンテープがないときには、値札シールとか剥がして、ペタペタしちゃうといいかもしれませんね♪

 

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